絹糸の精練と絹鳴り
|
まず始めに一つ、本当に多くの方
が「精練(せいれん)」を「精錬」と間違えて書いてこられます。
これだけ間違いの方が多いと言うことは、伝言ゲームの最初の人(何処か
の学校や販売店)が間違われていたんじゃないかな?
(これだけ確率の高い間違いは正直見たことがないです)
皆さまはおそらく正しいと思って使われているのでしょうが正解は「精練」
(いとへん)です。
以降気を付けるように!「は~いっ!」(返事が小さいっ!)
さ~それでは本題に参りましょう!
当店で現在ご用意させて頂いている精練の種類は「石鹸精練」「草木用精
練」(精練用ソーダ灰使用)ですがよく「どちらが良いの?」と聞かれます。
どちらにも特徴がありますが、絹糸には石鹸精練の方が優しいみたいです。
それなのに草木染用にソーダ精練をお勧めしているのは石鹸精練の後に
は石鹸の成分が残りその成分が絹糸への染料の吸収を遅くさせる作用
(緩染作用)があり染まる速度が遅くなるからです。
その他、長時間染めに時間がかかる事により逆に絹糸に負担がかかったり綾の乱れにより糸繰りがしにくくなったりする。そんな理由なんです。
草木用精練は短時間で糸を乱すことなく染色できるし、多くの方が嫌がる石鹸かす(染色時にお鍋の上に白く浮かぶ物質)も出ないし多くの方はこち
らを好むんです。(後、お鍋も汚れないからね!)
あと精練した時点でよく絹鳴りがする糸ほど良い絹糸と多くの方は思われて
いるみたいですがこれは大きな感違いです。同じ絹糸でも精練や最終加工
の差で絹鳴りのするかしないかは大きく変ってしまいます。
絹鳴りはフィブロイン(絹糸の繊維質の所)の摩擦によっておこりますが、石鹸精練は草木用精練と比べて絹糸の中に石鹸成分(ロウ状の物質)が残るから摩擦係数が下がり基本的に絹鳴りは小さくなります。
草木用精練は精練直後でもある程度絹鳴りはします。
(草木染用精練の方が「絹鳴りが大きいので良い加工」と言うのも間違いで
すのでご注意!)
もちろん、どちらの精練でもセリシンの落とし加減が少ないと絹鳴りはしません。
ただ、当店で在庫している生糸撚糸のほとんどは未精練でおいてありますので全く絹鳴りはしません。
しかし、これだけではないのですどちらの精練でも精練後に酸系の薬品を入れると化学反応で石鹸成分が違う物質に変わり急激に絹鳴りは強くなるんです!
通常、西陣で染色をされる時も最終的に酸系の薬品を入れて機屋さんに納めるらしいですが、これは色止め(染料の吸収をしっかりさせ堅牢度を上げる)の為にされる加工なんです。
もちろんこの状態での絹糸はかなり光沢もあり絹鳴りもします。
まず、染色前に酸系の薬品を入れるとどうなるか?
まず良い点は石鹸精練でもお鍋に浮き上がる石鹸成分が無くなること。
ただ、このことによって必要以上に染料の吸収が良くなり色斑がおこりやすく
なるのです。
書いてしまえばこれだけのことなんですが、これを避けるため当店では精練処理の最後に酸系の薬品は入れておりません。(通常、染色前の状態では酸系の薬品をいれないのでこれで普通なんですけどね!)
ある方に聞く所ではこのことを知らない一般の方が多いので、精練加工後の処理で酸系の薬品を入れて絹糸を販売している店があるみたいです。
絹糸の良し悪しは音とは全く関係ございません。
音にだまされるな!
後、最後になりましたが藍染めの場合は石鹸成分が藍の釜に入るとあまり宜しくないので草木用精練をお願いしております。
以上で本日の講義は終わりま~~~す!
お疲れさまでした~~~!
※これらは2002年9月19日に西陣の糸屋が発行したメールマガジンを変更した内容です。
ページ内の文章・写真・画像の一切の転載を禁止します。著作権は有限会社吉川商事にあります。
このページ記載の内容や新着情報は無料でご購読いただけます。
最終更新日2012年2月
|